にんげんに生まれなくてよかった/ホロウ・シカエルボク
ンの駐車場に
一台の車が止まり
一升瓶みたいな体型のじいさんが運転席から下りて
傘をさして反対側のドアを開け
同じような体型のばあさんが下りてくるとき
濡れないように傘をさし向けた
そしてふたりはなるべくたがいを濡らさぬよう
しっかりと腰に手を回しあって
静かに店の入口をくぐっていった
きっとふたりは生真面目な生真面目な人生の褒美として
そんな毎日を手に入れたのだ
おれは
小さな傘をさして
膝の裏までずぶ濡れになりながら
そんな光景をやり過ごした
おれはにんげんには生まれなかった
面倒事を抱え込んで生まれてきた詩人だった
台風が近
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