にんげんに生まれなくてよかった/ホロウ・シカエルボク
すでにあるもの以上のものにはなれない
ありもののイデーはそりゃあ収まりはいいだろうし
既定のものを規定通りに出来るようになれば
なにかいっぱしのにんげんになったかのような
ゴキゲンな錯覚だって簡単に出来るだろう
緩慢な毎日の中で誇り高く言いなりになる
にんげんに生まれなくて本当によかった
今日
おれは昼休み
台風が近付くなかを
小さな傘をさして歩いていた
膝の裏まで雨でぐしょぐしょになりながら
京都弁で話しかけてくる自動販売機で温かい飲物を買って飲み
すぐそばの休憩所のトイレでひと息ついて
仕事場に戻る途中
小さなレストランの
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