北の亡者/Again 2013神無月/たま
息を吸って ほら
秋はもうこんなに深い
(二〇〇〇年作品)
♯
ひとは半世紀も生きれば、様々な生きものたち
の死に出逢うことになる。
わたしが生まれて初めて出逢った死は父の死だ
った。八歳のとき、病室から帰った父が居間の仏
壇の前で横たわっている、その不確かな感触の中
で、からだの芯から凍えきった父の横顔は、わた
しのすべてを拒絶して近づくことすらできなかっ
た。そのとき、わたしを支配したのは父の死とい
う現実のみであって、わたしの感情を揺さぶるこ
ともなく、足早に過ぎ去ってしまった。
泣くこともできなか
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