北の亡者/Again 2013神無月/たま
 
なかった父の死を、わたしはず
っと引きずって生きていたのだろう。幾度となく、
肉親や友人の死に出逢うたびに、死というものを
どう受けとめたら泣くことができるのか、という
自意識の壁をわたしは超えることができなかった。

 二〇〇一年六月、も吉は十五年の命を閉じて、
北の亡者の元に還った。この「ブランコ」はその
前年の秋に書いたものだけど、「北の亡者」は全
六章あってこれは第六章の最初の作品になる。こ
こからも吉の晩年の作品がつづくが、も吉の死が
わたしの半生を根底から覆すことになることを、
このときはまだ知らずに書いていた。
 梅雨明けをもたらす雨が音をたてて降りしきる
[次のページ]
戻る   Point(33)