季節外れ/くみ
髪がうっとおしいのか前髪だけをピンで上げていた。
「黙って見てるなよ…」
「何やってんのか見てなくてもだいたいわかるもん」
「わかってたまるかよ」
何かを刻んでいるのかトントンと心地いい音も聞こえてきて、俺は思わず微笑んでしまった。昔、恋人に料理を教えた記憶はあるがそれ以来サボっていたらしく、少し前までは子供でも扱える包丁もろくに使えなく怪我ばかりしていた恋人が、何があったのかは敢えて聞かないが再び密かに練習したらしい。
今は何とか昔教えてやった誰でも作れるかなり簡単な料理なら出せるまでになった。毒味をさせられる時はさすがにハラハラしたが、それが何かいじらしくて可愛い
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