季節外れ/くみ
覚に襲われる。夏の終わりにその家に居られたら幸せだろうなと、ふっと思いながら想いを馳せた。
俺は本は元々好きだったから色々な本を読んできた。特に仕事柄、経済や国際関係の本を読むのが多いが、古典も嫌いじゃない。昔、受験勉強をしていた時も和歌は興味があったし、これはいいなと思うのは夏の終わりや秋の歌だった。俺は読んでいた本をローテーブルの上に置くとごろりと寝転んで、冷たいフローリングの上で涼を取った。
「またそんなだらしない格好して……」
声のする方に目をやると、恋人が珍しく台所に立っていた。何か茹でているのか手で湯気をパタパタと振り払っている姿に、俺は顔だけをそちらに向ける。
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