「なにしにきたの」/ホロウ・シカエルボク
の無い風が吹きつけるので
街に居る時よりも肌寒かった
もう十月なのだ
失くしていた記憶を取り戻したみたいにそう思った
そんな瞬間には
未来も過去も存在しないものだ
おれは線路を
線路を横切っている
四年目の靴が
敷き詰められた石を踏む音だけが
アフリカの楽器のように
ちいさく聞こえている
そして
街の中よりも風は強く冷たい
あの
同級生の女の子とはどうして別れたんだっけ
そもそもつきあっていたんだっけ
突然そんなことが気になった
そしてまるで思い出せなかった
どうして客車の隙間で
そんなことになるまで高揚したのかなんて
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