「なにしにきたの」/ホロウ・シカエルボク
と
おれは
それを愚かだとは思わない
少なくとも彼には
その人生を生きるだけの意地があった
握らない撃鉄が
いちばん高潔なのだ
街をすっかり出てしまうと鉄道があり
客車の並んでいる倉庫があった
ずっとむかし
あの客車の隙間で
同級生の女の子とセックスした
遠い遠い
遠い昔のことだ
光景ははっきりと思いだせるのに
感触についてはまるで思い出せない
それははねられた子猫のように
固くて軽くなっているだけだった
きっともう
死んでしまっているのだ
破れた柵の隙間から線路に入り
ずっとずっと横切って歩いた
遮るものの無
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)