「なにしにきたの」/ホロウ・シカエルボク
つのまにか雨は上がっていた
おれは
そのことになかなか気付かなかった
なんども星が出ていることを確認していたのに
どういうわけか
ほかに
なにか
気になっていることがあるわけでもなかった
商店が並ぶみじかい通りの終わりで
知らない街に迷い込んだみたいな気分になる
見飽きた街なのに
どうして?
子猫が一匹
車にハネられて死んでいた
コミックの
驚愕の表現みたいに
ふたつの目玉が飛び出していた
たしかにきみは驚いたのだ
そんな風に自分のみじかい一生が終わりを告げたことに
そっと触ってみると
固くて軽かった
そこにもう脈
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