まるで他人事のように自分の冥福を祈る/ホロウ・シカエルボク
若い夫婦と生まれたばかりの子供が亡くなりましたとアナウンサー
彼女の今月の給料明細には
少なくともその三人の名前も刻印されていることだろう
彼女には彼らを追悼することさえ出来ない
電車の運転手が運行時刻を守るように簡潔に読み上げるだけだ
最終便が行ってしまったあとの
バス停に座っているのが好きな女が居た
名前も何も知らなかったが
仕事から帰る道の途中にほぼ必ず居た
そのうち互いに親近感を抱くようになったので
時々バイクを止めて隣に腰かけて話をした
雨ばっかりでうんざりだとかそういうくだらない話ばかりだったけど
すでに終わったものを待つのは永遠
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