パターナル/salco
んどし
その日も親父は興行していたんだが
ゆんべ淫売にもらった毛ジラミが温もったか
耳の傍を季節外れなブヨが掠ったのかも知らねえ
剣を抜こうとしたその途端
脳髄に衝撃が走った
手が震えたんだか喉が締まったんだか
食道をぶった切っちまったのさ
地面と垂直の頑丈な首の中
突き抜けた切っ先は気管軟骨に触れていた
真上を向いた親父の目が忙しなく動いたのは
信じられねえ夢から醒める為じゃなく
この致命的ヘマを何とかする手段を
青い空の何処かに探そうとしたからに他ならねえ
ごぼごぼと溢れ来た血が下顎を塞ぎつつあった
何故なら気管支動脈もぶった切っちまい
飲み下す事も出来ねえ
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