夜明けまでの闇は果てしなく/ホロウ・シカエルボク
?」
「覚えてないの?すっごい苦しそうだったわよ。」
覚えてなくて幸いだ、と俺は言った
「大嫌いなんだ、あれ。」
よかったね、と女は笑った
医者は
ベッドの空きが無いから家で静養してくれ、と言って薬をくれた
女は家まで寄り添ってくれた
「それじゃあね、ちゃんと安静にしてなくちゃ駄目よ。」
ありがとう、と俺は言った
名前も聞いてなかったことに気がついたのは
それから自分のベッドでひと眠りしてからだった
そして名前を聞く機会は二度と訪れなかった
三日後、ローカル新聞の片隅に彼女の写真を見つけた
ジョギング中の女性が乱暴されて殺され
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