夜明けまでの闇は果てしなく/ホロウ・シカエルボク
 
いよ。」
そう言って俺はうつ伏せになって丸まった
そうしているのが一番楽だったからだ
女はしばらく側に佇んでいたが
やがて西の方へ走り去っていった
ききわけのいいヤツで助かったな


次に目を開けると朝になっていて
俺は清潔な病院のベッドの上だった
フォーク・シンガーが俺を覗きこんだ
「胃潰瘍だって。もう少しで血管を破くところだったそうよ。」
「君は…帰ったんじゃなかったのか?」
違うわ、と女は微笑んだ
「走るべき距離を先に走っただけよ。戻ってきてもあなたまるで動いていなかったから、これは車を呼ぶべきだと思って。」
「俺、胃カメラ飲んだの?」
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