夜明けまでの闇は果てしなく/ホロウ・シカエルボク
なんだか判らない吐気に襲われて
堤防を下りて河原で吐いた
長いこと吐いた
河に引きずり込まれて流れていく吐瀉物と
河原にうずくまる慣れた身体の
どちらが俺なのかよく判らなかった
「ねえ、あなた、大丈夫?」と
女の声がした
俺は仰向けに寝っ転がった
80年ごろのフォーク・シンガーみたいなロングのストレートの
トレーニング・ウェア姿の細身の女が俺を見下ろしていた
「飲み過ぎたの?」と女は言った
飲んでない、と俺は答えた
「持病でもあるの?」
「ないよ」
「救急車呼んだ方がいい?」
「いや…たいしたことない、たぶん。ほっといてくれていいよ
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