夜明けまでの闇は果てしなく/ホロウ・シカエルボク
右目と左目でまるで違う方角を見ながら座り込んでいた
木のうろのように空いた口のはしから
カフェ・オレみたいな色の液体を垂らしていた
俺が小便を済ませて個室から出てくると
俺のことをぼんやりと見ながら
「あたし間違えちゃったかしら?」と言うので
何も間違ってない、と俺は言ってやった
「隣がちょっと使い辛い状況なもんでね。やむなくこっちを借りたんだ。」
あー、と娘は訳知り顔で頷いた
「あいつら毎日ここに来てするのよ。本当に気持ちが悪いわ。」
てことは、君も毎日ここに来てるわけか
「あたし?あたしは、住んでるの。暮らしてるのよ、ここで。」
「トイレで?」
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