谷川雁詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
していくと同時に、社会もまた個人を形成していくということです。社会の内側に個人があると同時に、個人の内側にも社会がすでに入り込んでしまっている。谷川には確かにこの自覚がありました。だから、彼の詩には普通の詩に出てくるような語彙と共に社会的な語彙が頻出するのです。それは、彼が自分の内部に社会がすでに侵入していることを自覚していたからでもありますし、また自ら社会に対して働きかけようとしていたからでもあります。
このように、谷川は「あなた」という二人称に対して責任を持って積極的に働きかけ、また働きかけられただけでなく、「社会」という三人称に対してもそれを内面化し、またそれを形成していこうとした詩人で
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