谷川雁詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
ために使われている「あなた」でもないのです。それは、不特定多数の「あなた」、呼びかけの場に常に存在しているけれど、無数の人が入れ代わり立ち代わり交替していく「あなた」なのです。だから、谷川の呼びかけは決して恋人同士の閉ざされた空間に収まるようなものではないし、誰かを特別扱いしてその人にだけ呼びかけるのでもありません。それはあらゆる人に対して開かれている、というよりむしろあらゆる人に対して開かれていたい、より多くの人に伝えていきたい、そういう呼びかけなのです。
だから、谷川は積極的に他者に呼びかけ、そして積極的に他者からの声を聴く、そのように、他者との応答の関係を重視した詩人であります。そこでは
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