谷川雁詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
内側なのだ
谷川雁は、単に見たことや感じたことや考えたことを叫びたてた詩人ではありません。そのように、「私」「僕」という一人称の閉ざされた独白として詩を書いていたわけではないのです。彼の中には、自然や農村共同体や、「あなた」「君」という二人称、そして「社会」「彼ら」「それら」という三人称が複雑に交錯していたのです。
「東京へゆくな」という題名が示す通り、この詩は「あなた」に対して向けられています。「立ちのぼらせよ」「追いはらえ」など、「あなた」への呼びかけがこの詩にはたくさん出てきます。ですが、ここでいう「あなた」は特定の誰かではないし、かといってまったく空虚で言葉尻を合わせるため
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