谷川雁詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
東京へゆくな
ふるさとの悪霊どもの歯ぐきから
おれはみつけた 水仙いろした泥の都
波のようにやさしく奇怪な発音で
馬車を売ろう 杉を買おう 革命はこわい
なきはらすきこりの娘は
岩のピアノにむかい
新しい国のうたを立ちのぼらせよ
つまずき こみあげる鉄道のはて
ほしよりもしずかな草刈場で
虚無のからすを追いはらえ
あさはこわれやすいがらすだから
東京へゆくな ふるさとを創れ
おれたちのしりをひやす苔の客間に
船乗り 百姓 旋盤工 坑夫をまねけ
かぞえきれぬ恥辱 ひとつの眼つき
それこそ羊歯でかくされたこの世の首府
駈けてゆくひずめの内側
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