【音】塩時計には音がない---三篇のオムニバス/るるりら
してしまったと泣いているが 声は聞こえない
想いを黙読する私の耳は 塩で出来ていて
耳の穴には 絶えず塩の粒子が吸い込まれてゆく
誰かの思いを黙読しようとするたびに
この耳は 大気中の塩を この身にひきよせて
耳の形が形成されているようだ
あ「かめさん かめさん」という思いが聞こえた と思ったら
塩の亀が わたしの目の前の道を 横断している
亀の甲羅も体も 塩でできているから
いつかは また 風に解けてゆくだろう
亀が海を目指している
それでも ゆくのだね
【海へ】
亀と一緒に
どれ
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