無口で運転の上手い人/夏美かをる
 
達を目的地まで運んでくれた

そうやってひとつ またひとつ
家族五人が寄り添って暮らしていた玉響に
鮮やかな思い出たちが
彩りを添えてゆき…   

やがて家族がばらばらになった時
やはり無口で運転の上手い人と
新しい家族を作る決心をしていた
?お父さんのようなむっつりとは結婚しない?
そんな生意気を言い続けていたのに

八月最後の日曜日
その人が いつも通りむっつりとしたまま
CR-Vを運転している

「疲れたのなら運転代わるけど…。」
「君の運転なんかじゃ 余計リラックスできない。」

それきり弾まない会話
子供達はとうに夢の中で
昼間見たバイソンを
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