無口で運転の上手い人/夏美かをる
 
ンを絵日記に記している
黄金色に点った杉の木立が
走馬灯のように規則正しく流れて行く

次の瞬間はっと我に帰れば
馴染みのスーパーの灯りが見えてくる
十時間離れていただけなのに
やけに懐かしい街並み

左側には相変わらずむっつりしているだけの横顔
無防備に眠っている
異国から嫁いできた嫁と
まだあどけない二人の娘達の命が
ハンドルを操るその両腕に
重く、限りなく重く
のしかかっていたというのに―

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