「人生」と言う名の美術館/創輝
った
仕方がないから僕は若い男に尋ねた
「赤い絵の具はどこでしょう」
男は黙って僕を指差した ああ 分かっていたとも
僕の赤を一生懸命に溜めているものがあったね
他の色はすっかり塗ってしまった
美術なんて駄目な僕だったけれど 美術館に入るなんてことをしたからか
不思議と上手い絵になった
だから後は赤い色だけ
僕は 僕の中にある朱を取り出して
一生懸命に 絵の中の少年にあかを塗った モデルは一体誰だろう
誰がこんな絵のモデルになったのだろう
やっと出来上がった絵を見て
若い男は無機質な声に少しだけ他の色を混ぜて呟いた
「やっぱり
こ
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