ぶ厚いカーキ色のタイツ/栗山透
 
季節は冬
空はいちめん曇っていて
あたりは薄いベールをかぶったように
淡くてうすぐらいコントラストだ

右に目を向けると
彼女の左脚とそれを抱える左手が見える
体育座りをしている
ぶ厚いカーキ色のタイツ
時折、膝のあたりを両手でさすっている
寒いのだろう
僕も寒い
彼女は物思いに耽るようにまっすぐ前を見て
僕にむかって話をしている

彼女は話をしている

僕はそのときはじめて
彼女が話をしているのに気づいた

普段は聞き上手と言われるのに
今日の僕はひどい

それまで僕は
カーキ色のタイツの下の脚を
のろのろと想像していた
どんなだったっけ?

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