生命の雲/まーつん
 
に恵まれることも
 また ないだろう

 ここに逃げ込んできた者に
 出来ることと言えば 唯
 じっと まなこを閉じて
 深い夢に浸ることだけだ  」

水底の碧い沈黙が
生きようと もがき続ける
僕の本能を締め殺す

老いたアナゴは 
ひょいと 巣穴に潜り込むと
口いっぱいに 白い霞を咥えて
戻ってきた

「腹が減ったろう?」

「それを どうしろっていうの?」

「食べるのさ。
 さあ 試してごらん 」

老いた魚の口から
零れ落ちた 一片の霞
白く輝くそれを 僕は
疑わしげに 口に含んでみた

すると体は 感覚をなくし
視界はぼやけ
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