生命の雲/まーつん
 
やけ 霞んでいく

僕は眠気に襲われて
水底に体を横たえた
抗いきれない重みが
両の瞼にのしかかる

「何を食べさせたんだ?」

僕は のろのろと
言葉を絞り出したが

周りに群れ集まる
アナゴたちの気配に
身をよじらせる

彼らの牙が
僕の腹に 尾に
背中にと食い込んできて

鱗を裂き
肉をえぐって
引きちぎり始めた

そうした痛みもまた
遠い何処かで起きている
他人事のように思えて
チクチクとした
針でつつく様な かすかな刺激が
深い 眠りの井戸へと 落ちていく
僕の意識に 追いつけないまま
置き去りにされていった

(V)

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