生命の雲/まーつん
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「いやだ あんたが
何処かへ行けよ 」
「わしはここを動かんよ
生まれた時から 住んでるのだもの」
僕はぐるりを見回して
ぶるりと魚体を震わせた
「こんな、
何もないところに?
寂しくはないのかい? 」
アナゴはにやりと笑いかけ
歌うように言葉を返す
「必要なものは みんなそろっとるよ
静けさに薄明り 酸素をたっぷり含んだ水
朝、昼、晩と にわか雨みたいに降ってきて
わしの腹を満たしてくれる プランクトンたち 」
「話し相手はいないだろ? 」
「そんなことはない
おまえさん
尾びれで砂を叩いてみなよ
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