鮫/ストーリーテラー
僕たちはどうせ鮫なので
誰かを傷つけずにはいられぬのです
生まれたての赤子の弱さを嗅ぎつけて
群れからはぐれた小魚を追いまわして
この鋭い歯牙で貫かざるを得ないのです
そこに滴る黒い血を
悪だ、悪だ、と責めたててはいけません
それでは何も食えぬのです
口に広がる雑魚の意地を
ただ忘れなければ良いのです
次から次へと生まれくるその歯牙を
受け入れるしかないのです
僕たちは所詮鮫なので
ここに留まるわけにはいかぬのです
「今日」を横目に流して
背中にコケが蔓延るを怖れて
鼻の一番切っ先で、大海を切るように進むしかないのです
たとえ、どこで独りになろうと
そんなこ
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