鮫/ストーリーテラー
なことに気付いてはいけません
それでは、ちゃんと死ねぬのです
自然という大きな大きないのちの走馬灯を
いつでもその目に湛えれば良いのです
喘ぎ、吸い込む新鮮な明日で
また次の夕陽まで泳ぐしかないのです
強いわけではないのです
自由なわけでもないのです
僕たちは、ただ、鮫なのです
愛を守り抜き
悠然とたゆたい
静寂とともに眠る
そんな母クジラに
僕らが畏怖を感ずるのは必然なのです
けれども遠くで血の匂いがします
いかねばならぬのです
生きるとはそういうことなのです
誰にもまかせられぬのです
鮫が鮫であるということと同じくらいに
生きるとは決まり切った主張なのです
あなたは、僕らに生きることをやめなさいとは言えぬのです
だって、僕らは鮫なのだし、僕は生きたいのだから
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