すべての詩場に染む・諦念/みずうみ鳶
 
ぱちっと割れるしゃぼん玉を
虫とり網で掬いとる

記憶がどこかでぱちんと鳴る
時の暗渠にぱちんと

まばたきが追った
睫毛がふさ と

眼はどこまでも追う

まばたきの一瞬に
りんごの実は落ちる

午睡のあいまに
花は開く

暗闇にりんごの実は生る
瞼の下りる瞬間に
ストップモーションで花は咲く

打ちのばされた
ソウゾウリョクの
まだ軟らかい鍛鉄に
針先まで削りだされた釘を打つ
痛みのない痛み

痛点の消失した
癒えることのない膿傷に
ずぶずぶと刃物が沈む

無反応の肉

<夜に去勢の逝く声が>

晴天の一滴
唾のような
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