夏の夜の海辺、回帰、再生/eyeneshanzelysee
 
いちばん美しい波が
わたしの軌跡を追従し
その前よりもいちばん美しい波が
また陸にあがり、
わたしの足跡を
きれいになくしてゆく。


波が足跡をさらったあとは、
すこしくぼみができていたり
小さな貝殻が落ちていたり
何かの漂流物が到着したりしていた。
だけどわたしの足跡が
すっかり残っていることはなかった。


つまりはどんな光景だろうと
わたしの刻んだそのかたちは
しょせんこの浜辺には
取るに足らないことだってこと。
砂浜の堆積物を形成することすら
少しだってできやしない。


それでも
わたしは歩いている。
歩いてゆく。
歩いてゆく。

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