タワー・オブ・テラー/済谷川蛍
太はケンジの右側に座ってケンジのゲーム画面を眺めながら、実はカオリのことを意識していた。
「ケンジ宿題したん?」とカオリが聞いた。
「うん」
「塾のも?」
「うん」
想太はこの他意のない姉と弟のやりとりにも、何か自分にアピールしているものがあるのではないかという妄想を抱くのだった。
一番低学年の2年生のナツオが「クッピー」と言ってクッションとソファーの間を飛び跳ね始めた。そして「100億ボルト!ビビビビビ!」と言って姉の身体を揺らす。彼は自分が考えた新種のポケモンになりきっていた。
この世界を楽園だと信じている子供たちは、時間の空白を好きな色で野放図に塗り潰していく
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