音の無い時間には血液の足音が聞こえる/ホロウ・シカエルボク
たちの考えることは俺には判らない、思考は幾つもの線を同時に勝手に引き続けるようなものだ、そうでなければ人間なんて生物にはなんの意味もないはずだ、なあ、あの店の名前、思いだせるか?カウンターに居たあの女の名前は?ラジオのニュースで言ってなかったか?そのことを思い出せるか?俺は自問しながら水を飲む、渇いて掠れる身体がほんの少し確かな脈を打つ、ああ、と走る文明たちのヘッドライトの中を迷いながら、俺にはそれを思い出す理由などないことに気付く、なあ、理由など必要なのだろうか?記憶の蓋を開ける時に、そんなもの本当に必要なのだろうか?もしも確実に思いだせるとしたらどんな記憶がいい?カウンターの中の女の名前で構わ
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