音の無い時間には血液の足音が聞こえる/ホロウ・シカエルボク
中で死んでいた女の話を聞いたかい?衣類はすべて剥ぎ取られていて、ナイフの刃先で全身に模様が刻まれていたそうだ、死ぬまでに相当な時間を必要としただろうって新聞で刑事が話していたよ、あの店には俺も何度か行ったことがあった、どうしてもやることが思いつかない時に何度か―確かに、明るい雰囲気じゃなかったさ、いつでも誰かの通夜が行われているような店だった、ジューク・ボックスはロカビリーばかりを大音量で鳴らし続けていたのに…「天国まであと3歩」なんて、いまとなっては笑い話にもなりゃあしないよな―カウンターの中には真っ直ぐな黒い髪を腰まで伸ばした女が、いつでもぼんやりした調子で腰掛けていた、注文を何度も繰り返さな
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