渓谷で/eyeneshanzelysee
 
あたしはやっぱり絶対的なよそものだった。
それでもあたしのふうっと吐きだした息のぬくもりは、
森の凛とゆるぎない空気が包みこんで、
ちゃんとすべてさらっていってくれる。
ちゃんとすべて奪い、失くし尽くしてくれる。
その残酷さは、なによりも強いいのちの原理だとおもった。
ざわざわ、ざわざわ、緑がゆれてる。
土の下に流れている水流の音が
足の裏側から、だんだんしびれるようにつたわってきて
あたしは目をとじる。
それから、自分の肺の表面を縫うように存在している
血管や細胞がまるであたしの全身になったかのように
あたしは、いつしかその作用を
どこか遠くの
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