或る命について/HAL
逃げるために酒を飲んでる訣じゃない
逃げるために仕事に没頭してる訣じゃない
酒に酔って仕事に夢中になって
忘れられる程ひとの頭は
少なくてもぼくの頭は単純ではない
いつも打ち合わせをしているときも
コピーを考えているときも
現場でカメラマンに指示を出しているときも
心に蓋はしてきたけれども
その蓋の下からの声をぼくは聴きつづけてきた
ぼくは出生前診断を悪とは想っていない
もちろん善だとも想っていない
ただ想うのは出生前診断ができるまでに
医学が進まなかったら
厳し過ぎる問いに
重い覚悟を必要とする問いに
ぼくと元嫁は少なくとも答えを出すことに
ときを費
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