背負って生きられるのかね/影山影司
 
てみればイエスキリストの真似なのだ。十字架を背負って、自らの処刑場まで歩いたように、鉢とともに歩くことで、罪を浄化しようとしているのだ。カミオの育てているハーブは、拳ほどの鉢だ。しかも、それは量販店で買った安っぽいプラスチックの。
 懐にハーブを忍ばせた自分を想像する。
 匂いは少しマシになるだろう、とカミオは思う。


 トットとカミオが雨の日に別れて、数日が過ぎた。
 珍しくトットからの連絡と、自分の家へこないかという誘いがあった。
 カミオにそれを断る理由はなく、日が暮れかかる時刻に二人は会う約束にした。

 トットはカミオのことを気に入っていた。率直に言えば、愛していた。
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