克服/破片(はへん)
 
劫なく、人類の行動への抑圧だけが百年ごとに強まっていく。誰の、何の手によるものなのか誰も知らない。
 わたしは煙草に火をつけました。デザインだけを追求したパッケージ。いつの間にか朝を迎えていて、いつの間にか茹だるような正午を過ごし、わたしは、いつの間にか夕日が沈むのを窓に取り付けられたカーテンの隙間から眺めていました。立ち上る煙とにおい、人体にとって有害なはずのニコチンやタール、窒素酸化物を肺胞に取り込んでも、いつからか、何も感じなくなりました。しかし姿を変えていく黄昏を見ている時は違います、いつになっても。恋人が家に来る約束をしていました。最近は夕方になっても気温が四十度を下回らないため、多分
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