取り替え子/影山影司
ん、僕、生魚は苦手なんだよ」なんていっつも言っててね。おかしいでしょう。母親は母親で、「あら、そうだっけ?」なんて呑気なものでね。終いには俺一人で食べちゃうんです。あのくらいの年って、食べても食べても腹が減るでしょう。だから相当食ったと思うんですけど、ふたりともニコニコして、また来てね、って言ってくれるんですよ。
一息にそこまで話し終わると、悠二は濃い目の味がついた肉じゃがの芋と肉を箸で掻き掴んで食べた。悠二の年は、三十くらいだろうか。なるほど、太っているわけではないが骨太で背も高い。筋肉がワイシャツを盛り上げるシルエットを見ていると、私のような枯れた人間からすると羨ましい。この男の成長期
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