取り替え子/影山影司
長期なら、そうとう賑やかな食卓になったろう。
「あ痛っ、いたたた」
悠二が胸を分厚い掌で抑えて、顔を歪めた。体を折って、ゆっくりと胸を擦る。どうしたのかと聞くと、胸の瘤が最近痛むのだという。彼が指差すところを見ると、消しゴムほどの大きさの盛り上がりがあった。
「昔事故でね、怪我しちゃったんですよ。幸い移植で何とかなったんですが……、時折、こうやって痛むんです」
額にうっすらと汗が浮かび、焼けた肌の上で玉になった。濡れたビールジョッキを掴み、薬を飲むように喉を鳴らす。怪我にさわるんじゃあないのか。と聞いても、悠二は頭を振った。
「すぐに治ります。……少し、話の相手をしてもらっても構いま
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