神創世記/みずうみ鳶
刻むうなりごえが
後ろを駆けていった
<後ろ?>
<はたして今の僕にとって>
<後ろとはいったいどこを指すのか>
眼球側壁に隠され
刻みつけられた言葉は
古代象形文字に似た初めて見る文字だった
しかしその曲線
形状から
子宮のなかで聞いた
臓器の声に似て
とても安らかだった
すべての文字は意味をなさなかったが
すべての脈絡をひいて
<海>
呼吸を撫でる手の役割をする
光の帯
心臓を撫でる透明な手
海底に刻まれた
光のルビ
眼には光跡がつらぬき
焼き付けられた
透過性の文字
波形が
光速で眼球を走り抜け
さらに水
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