雨の日の猫は眠りたい 2013/たま
肋骨の浮きでたうすい胸を隠し、すこしで
てきた下腹とちじれた陰毛の影に、だらしなくぶらさ
がった部品の位置を気にしながら張りのないおしりは、
色あせた合成皮革に吸いついている。
午後の日差しはわずかに粗い粒子をともなって白いカ
ーテンをゆらしている。窓の外には大きなケヤキの木
があってその梢の上には乾いた宇宙があった。
この地上にたったひとり分の木陰さえあればわたしは
こうして裸でいたかった。
ときには犬でもなく、猫でもなく、ヒトでもない。
まるで西瓜のような生きものでしかないわたしをたし
かめてみたかった。
階段のしたに眠るちいさな犬をまたいで二階にあがる。
廊下を
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