雨の日の猫は眠りたい 2013/たま
ければやさしく老
いることもできない。
だからもう、浅い夢をわたり歩くのはやめようと思っ
た。雨の日の猫のように明るい窓のしたや、乾いた木
の階段の上から二段目あたりで涼しい顔をして、たっ
たひとつでいい、やわらかい猫の手のとどく夢を見て
いたい。
まぁるい顔をした牡猫のようなわたしがいつもの食卓
に頬杖ついてあつい紅茶をすすりながら朝のパイプを
銜えていたとしても妻さえ気付かないはず。
それでいいと思った。
目覚めた午後はほどよく冷えた西瓜をたべる。
汗にまみれたTシャツもブリーフも脱ぎすてて居間の
椅子に腰かけて、真新しいタオルを日やけしたほそい
首にかけて肋骨
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