「腰越 Z 」の野球帽/服部 剛
の家の表札が埋め込まれていた
ブロック塀の足元に
何故か ひとりの埴輪(はにわ)が 忽然(こつぜん)と置かれていた
小さい瞳の闇の空洞から
とても太っていた O のお父さんが小人の姿で
30前の僕が猫背のままゆらゆらと歩くのを
じっと見ていた
〜
あの頃 小学校を卒業して
縦縞(たてじま)のユニフォームを脱いだ僕等は
「 Z 」というチーム名が白く光る黒い帽子を
最後の試合が終わった夕暮れの校庭に置いてきた
中学1年の秋
野球部の仲間だった M が神妙な顔つきで
隣のクラスから5分休みの教室に入ってきて
「 O のお
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