夜/しゅう
 
けたくなかった

きっと夜は知っていたんだ
もうこの部屋が世界中で最後の夜だってことに

旅に出るって決めたときから
夜は急に暖かくなって
私は毎晩寝付けなかった
瞳の奥からなぜか涙がこぼれてきて
夜が泣いているのか、私が泣いているのか全然わからない


+雪原が良かった
 荷物はボストンバッグ一つ
 白さがまぶしかった
 でも、こんなに暗い明るさを私は他に知らない

夜が、ふいに瞳からいなくなった気がした
雪原が群青に染まっていた
白夜が続く
立ちつくして瞳の奥が熱くなる
照り返しだ、照り返しに夜が混じっている
白夜がのしかかる

世界はこんなにま
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