夜/しゅう
 
入る
私の部屋に夜がやって来た日
生まれて初めて、寒さを感じた日


+夜は瞳の中が好きだ
 私は彼のために蛍光灯を外してキャンドルを灯す
 じっと火を見つめていると
 夜はむずがゆそうに私の目の中を泳ぎ回る

その日から世界中で私だけが夜だった
人混みでもベッドでも
春が来て、夏が過ぎても
ささやきが嬉しかった
夜は優しい

部屋の窓にはガムテープで目張りがされている
夕暮れを知らない私たち
朝日を知らない私たち


+旅に出たかった
 夜は部屋を出たくないと言ったけれど
 私は夜に世界を見せたかった
 瞳の中や、冷蔵庫のかげばかりに彼を縛り付けた
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