先輩との話/yamadahifumi
 
られる、その直前の、話の切り出しを待つかのような。
 「・・・ところで、お前、金、もってるか?」
 ほら、来た、と僕は思った。金ですか?・・・と僕は言いつつ、その後に先輩が語り出した話を全部聞いた。・・・それは実にありきたりな話だった。
 同僚の女を妊娠させてしまって、困っている。それと共に、その事が嫁にバレて、嫁は離婚を持ち出してきている。慰謝料を払うとなったらバカにならない、それに、また、それとはちょっとした別件で、お前に、信用のある家柄の友人という役柄を演じてもらう必要があるんだが・・・などという事を先輩は話した。僕はその身の上話を全部、上の空で聞いていた。僕は携帯を耳に当てながら、P
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