失われた花々に対する二、三の刑罰/青土よし
 

太陽が赤子に火を放つ。
舞い上がる地響き、
少女の震え、
熱風が混沌を煽動し、
蔦が汗に絡みつく。
魂は見つめ合う、
夥しい羽虫の群れが、
砂の丘を埋め尽くすまで。


 男は本を閉じ、元あった場所に戻した。手を伸ばし、眠る祖母の頬に触れた。細い皺の刻み込まれた皮膚は、柔らかくすべらかな感触を残した。屈み込んで胸元に耳をあてる。心臓からは途切れることの無い低音が聞こえた。巨大な鐘を撞いた後の残響に似ていた。
 外から頻りに二種類の音が聞こえ始めた。幟が風にはためくような乾いた音と、水の繁吹く音だった。男は入ってきたときと同じ手つきで戸を捲り外を見た。階段の下で一人の少女が
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