失われた花々に対する二、三の刑罰/青土よし
のひらほどの大きさがあり、羽ばたくたびに水色の鱗粉が薄い夜霧の中を舞った。奇妙な音の正体は、この蝶の羽ばたく音だった。祖父は誘われるように石段を下りた。蝶の傍らに立つと、輝く鱗粉が老いさらばえた彼の肉体を包んだ。その瞬間、夜空を流星群が駆け、老人の孤独な心臓を撃ち抜いた。
祖母の寝床の横に、一冊の本が置いてあった。装幀は深緑の布張りで、題字と作者名は金糸で刺繍されていた。それは詩人である祖父の遺したものだった。本を開くと跡のつけられた箇所があり、そのページには「枯れる花の赤」という題の詩が載っていた。
「枯れる花の赤」
横溢する叫び声、
兵士の怒号、
水は油と化し、
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