失われた花々に対する二、三の刑罰/青土よし
 
だった。
 この現象は、乾季になると一度に大量の雨が蒸発するため発生するもので、集落では稀に起こることだった(それでも、祖母のように人間が巻き込まれる事例は、史実以外存在しなかった。少なくとも今生きている住民たちの記憶には無かった)。毎年必ず十月二十八日に乾季になるので、対策として、その日の前後、住民は一晩中眠らない習慣があった。祖父母の家から時間が奪われた瞬間、祖父は友人の家で開かれたた宴に参加していた。妻を連れ立っていたが、いつの間にか彼女の姿は消えていた。夜が明け始め、例年通りみなで乾季の来訪を確認すると、おのおの自分の家に帰って行った。
 暗い寝室で祖母は静かに眠っていた。祖父は酔いか
[次のページ]
戻る   Point(1)